きらきらと輝くその金糸のいとおしいことと云ったら、初めて目にした時の胸の高鳴りが今になっても増すばかり。
ギンが柔らかく撫でると生娘のようにぽっ、と赤らむ。
そんなイヅルの仕種には脂が下がって仕方ない。
要するにギンは、イヅルに一目惚れでべた惚れであった。
 
「こんなに近くあなたさまを感じられる。逸る心音が煩いぐらいなのです。」
 
布団の中での睦言は、何時だっていとおしい。
搦め捕るように握った手に可愛らしく力を込めながらイヅルがそんなことを云うものだから、なんていじらしゅうてかいらしい子やろ、とギンも堪らなくなる。
甘えるようにしてイヅルの胸にギンが頭を寄せると、母とはこんなものだろうかと要らぬ発想に及ぶ時もある。
冷血非道人外妖怪と呼ばれるギンも、愛する部下と居ては何処までも人間らしいのだ。
 
「ほんま、イヅルの心臓さんは忙しゅうてしゃあないな。」
 
「隊長、生き物が一生で打つ脈動の数は決まっているのですよ。」
 
細い手がそっとの銀糸を覆い、イヅルは穏やかな眼差しでギンを見つめた。
 
「御存じでしたか?」
 
とくとく、と博識な彼の心音を聞きながらギンは頭を振った。
 
「ううん、初めて聞いた。」
 

ふにゃり、と泣きそうにイヅルが笑うからギンの心臓も痛くなる。
 
「あなたといると、僕の心臓は止まって仕舞いそうです。」
 
うわぁ、その顔めっちゃドキドキする。
 
「それ、ものっそい殺し文句やん。」
 
ボクも死にそう、と云うとイヅルははっとしたように耳まで朱くなった。
 

…………
べた惚れ×天然=ばかぽー。
 
20110325.
 
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